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理央 周(めぐる)様
関西学院大学大学院
経営戦略研究科 教授
マーケティングアイズ株式会社 代表取締役
フィリップモリスなどを経て、インディアナ大学経営大学院にてMBAを取得。アマゾンジャパン、マスターカードなどでマーケティングに従事後、起業。新規事業立ち上げ・ブランド構築のコンサルティングおよび社員研修を提供。ビジネス書著者として国内外で20冊以上出版。
座右の銘
マーケティングは何をやるか、
という手法だけを指すのではなく、
社会と顧客に価値を提供することで、
売れる仕組みが入った、
収益を上げる計画を、
作り実行すること。
※公式Twitterより
コメント全文
▼コロナ禍における消費の動向、経済の影響について
インタビュアー
新型コロナウイルス感染症の影響により、BtoC事業者はどのような影響を受け、どんな課題を抱えているのでしょうか?
理央 周
2020年は、新型コロナウイルス感染症という未知の存在に私たちが初めて直面した年でした。“得体の知れないもの”と対峙しました。その結果、行動制限など規制も厳しいものになり、流通業においても多くの制限の中でビジネスをせざるを得なくなりました。感染を広めないための「まん延防止」などの対策により、飲食店などは早い時間に閉店を余儀なくされ、繁華街がゴーストタウン化したことも記憶に新しいでしょう。こうした苦難の時期を経て、不確実だけれども先読みがある程度できるようになったのが2021年でした。
しかし、感染拡大初期に比べ行動制限が緩和されてきつつあるとはいえ、依然として感染拡大を防ぐため強い行動制限が国民に求められています。自由に外出できなくなり消費者の生活における行動や心理に変化があり、購買行動も変わりました。こうした背景の中でBtoC事業者は、これまでのやり方が通用しなくなったわけです。多くのBtoC事業者は、顕在的な課題を抱えることになったと言えるでしょう。
企業も売上を出すためになんとかしなくてはと、DX(デジタルトランスフォーメーション)やAIが重要だと「MA(マーケティングオートメーション)を入れてみました」「インサイドセール入れてみました」「でもなかなかうまくいきません」――。そう悩まれた会社も多かったのではないでしょうか。うまくいかないのはなぜだろう、原因がわからないという企業が多いというのも事実のようです。
BtoCに限らず、コロナ禍においても「顧客ニーズを見つけ、自社の強みで解決する」という商売の本質は変わっていないはずです。なので、今はじっくりとこの本質を見失わないようにすることが重要だと思います。
インタビュアー
アフターコロナを見据え、BtoC事業者はどういった戦略、施策で経営を行っていくべきなのか、ご意見をいただけますでしょうか。
理央 周
IT業界において進化のスピードは、とても速いものです。ウーバーイーツのようなビジネスモデルも一般的になってきました。なので、商売の本質に立ち返って、「自社の強みでお客様のニーズに応えたり、悩みを解決するために何ができるのか」を考えることが大事ではないでしょうか。3年前、Amazonはアメリカのスーパーマーケット大手のホールフーズマーケットを買収しましたし、Amazon Goの仕組みを使ったリアル店舗を出店しました。また、アパレルのAmazon styleというアパレルの店舗もオープンする予定と報道されました。Amazonが仕掛けたこれらのリアル店舗とオンラインを合わせると、店頭で商品を買うか、ネット注文して自宅で受け取るという選択ができるのが特徴です。
新常態の中で生活にネットがより浸透してきたことによって、消費者にとってリアルとネットの境界がなくなってきていて、一連の購買行動がシームレスになってきています。アマゾンの事例にもあるようにこうした背景から、BtoC企業はオムニチャネル化に取り組むべきではないでしょうか。つまり、顧客が探し、買い、受け取ることをどこでもできるようにする仕組みを作るということが、これからは重要になるのです。
もちろん、注意点もあります。まずユーザー目線に立って分析し、潜在ニーズを見つけることが重要です。ではどうしたらユーザー目線で考えられるのでしょうか。これまで企業は「うちの会社は」と自社が主語でしたが、そこを「お客様」を主語にするという具合に、どういった体験価値を消費者に与えられるかという視点で考えられるようになります。
また、お客様を知るにはデータ分析も必要になるでしょう。顧客の行動データとそれをもとにする知見が他社との差別化につながるからです。差別化とは、違うものを作るということではなく、お客様から見た時、競合よりも自社のほうが「価値がある」と認識されることが本当の差別化です。なので、データに隠された顧客が本当に欲しいと感じる価値を見抜く力が必要です。
インタビュアー
ECサイト等、インターネットを利用した買い物が一般的になっていますが、コロナ禍前後で消費動向にどのような変化があったのでしょうか?
理央 周
消費者は、「時間」に価値を感じるようになりました。例えばウーバーイーツと出前館を比較した時、メニューや価格の差が縮まってきました。そんな中で、消費者は食べ物をより早く受け取れることにより大きな価値を見出すからです。クイックコマースと呼ばれる業態の宅配専門スーパー「OniGO」は、地域限定ですが注文から10分で届けるというスピードを売りにしています。またZホールディングスも、傘下のYahoo、出前館とアスクルを組み合わせて、クイックコマースのサービスを展開しています。そういったサービスが登場する背景には、時間を価値と感じる消費者のニーズがあるように思います。
▼なうモールの印象について
インタビュアー
サービス概要やコンセプトをご覧いただき、率直なご感想をお願いいたします。
理央 周
とても面白いなと感じました。ネット上にもモールはたくさんありますが、広告を起点にしたサービスというのは、これまでなかったですからね。ショッピングモールに足を運んでも、どこのショップがどういうセールをやっているかを瞬時に把握するのは難しいものです。でも、なうモールならそれがわかるわけです。情報には、一覧性がとても重要です。紙の地図も一覧性という価値があるからこそ、アプリやインターネットで地図が確認できる今の時代でも、幅広い購買層がいるのです。
また、広告主にとっては、低リスクという点もなうモールの嬉しいポイントではないでしょうか。1クリック10円なら、100人来て1割買ってくれたら、100円でコンバージョンが達成できますね。CTRが100円なので、入札の必要もありません。広告を出す事業者側にとって使い勝手が良いと思います。
また、さまざまな理由によりプラットフォームで出品したくないという事業者にとって非常に便利なサービスではないでしょうか。例えばAmazonや楽天などのモールに出店すると、倉庫の確保や在庫管理が大変で負担がかかります。販売や購入ユーザーのデータを見られないことも、既存のモール利用で一番不利益な点と言えるでしょう。
インタビュアー
ビジネスフローや仕組みについてユニークだと思った点があれば教えていただけますか。
理央 周
テレビでもネットでも、コンテンツのなかに広告が混ざっています。なうモールは、全て広告がメインコンテンツというのが面白い特徴だなと思います。ユーザーの「買いたい」「欲しい」というニーズにダイレクトに訴求したもので、非常にユニークです。広告を出す側もイメージ広告ではなく、成果直結型の広告を出せます。比較的リターンが欲しい小規模事業者やスタートアップにとって相性が良い気がします。
また、希少性が高い商品やサービスを売りたい側にとってもメリットがあります。例えば、限定品といったものは希少性が高いと言えますが、地方で地元の人たちに絶大な人気のラーメン屋の販売セット先着20名様といったものも希少性があると言えるのではないでしょうか。1点もののジュエリーが、なうモール限定でしか手に入りませんといったように。ブランディングとは、ニッチトップを取ることです。そういう意味で、なうモールにしかないものが売れるようになれば、企業のブランディング強化につながります。
インタビュアー
インターネット広告の閲覧者を増やす、購買意欲の高い顧客を1クリック=10円で呼べる、このビジネスモデルが海外で成功する可能性について、コメントをお願いいたします。
理央 周
中国や韓国の場合は、Eコマースの進化がとても速いです。ですから、この商圏では大胆な差別化も必要になるでしょう。各国の規制も考慮する必要があるでしょう。中国のライブコマースマーケットは日々勢いを増しているので、これに乗らないという手はないと思います。中国には独身の日というのがあり、その1日だけで10兆円売れるという話もあります。それぐらい規模が大きいし、競争も激しい市場です。しかし、なうモールのようなプラットフォームが中国にはなかったように思います。日本よりも、マーケットの時流が速く複雑なので、新しいサービスも受け入れられる可能性があるでしょう。インフルエンサーとコラボした企画で広告を出そうという事業者が出てくるかもしれません。
また、今後Eコマースが伸びると予測されるタイ、インドネシア、台湾などでも受け入れられる可能性があると思います。また、アメリカのクーポン文化に注目するのも良いでしょう。少し古い話ですが私が留学していた1990年代では、アメリカではチラシのクーポンを持ってスーパーへ行く人たちが多くいました。アメリカへの進出には、紙のチラシと組み合わせるサービスがあっても良いかもしれません。
インタビュアー
最後に全国のBtoC事業者となうモールへの応援メッセージをいただければと思います。
理央 周
BtoC事業者へのメッセージ:
明けない夜はないし、止まない雨はないとは言うものの、今が厳しいのですという事業者さんは多いと思います。しかし、日本のモノづくりは世界から見ても素晴らしいことに変わりありません。あとは、正しい売り先を見つけて、売り方を工夫することが大事です。日々の生活のなかにきっとヒントはあるはずです。顧客にできることは何か?を考えていれば、絶対良いアイデアが生まれるはずです。私も頑張りますので、一緒に頑張りましょう。
なうモールへのメッセージ:
私は15年くらい前まで、マーケティングマネージャーとして企業で働いていました。アマゾンやジュピターテレコムの時などは、新しいサービスを世の中に導入することが仕事でした。新しいことに挑戦することは、企業や担当者にとって難しいことが多いのも事実です。目の前にない道を作ろうとしているからです。たくさんの困難やハードルもあるでしょう。でも乗り越えた人じゃないと見えない景色があります。なうモールさんにしか見えない未来がきっとあるはずです。そこを目指して進んでいただきたいと感じます。低コストで費用対効果が高ければ事業者も活気づきますし、ユーザーも安く買えて良かったと喜ぶでしょう。事業者もユーザーも、ともにハッピーになれるサービスだと思うので、これからの幅広い発展を楽しみにしています。